『ひざの痛み解消法』

2023-01-01一日一読,膝痛

『東大教授が本気で教える 膝の痛み解消法』という本を読みました。監修は福井尚志(東京大学大学院教授)と深代千之(東京大学名誉教授)です。

その最初の部分から読み取ったことを以下にまとめます。また、この本の後半部分には膝の痛みの解消法としてタイプ別に運動法が載っています。自分でもやってみて、治療室でお伝えできるようにしたいと思っています。


〇膝の軟骨にターンオーバーは起こらない

古い組織が新しいものと入れ替わることを「ターンオーバー」という。
肝臓や心臓の期間は短く、皮膚や筋肉は長い。
膝の関節軟骨のタンパク質は、生まれたころにできたものが90歳以上になっても残る。
質が劣るのですり減りやすくなる。

〇軟骨がすり減るから痛みが生じるわけではない

軟骨に神経はない。だから軟骨が削れたところが痛むわけではない。

東大医学部の研究グループが2005年に調査したところ
変形性膝関節症と推定される人 2,400万人のうち、痛みのある人が 820万人だった。(約34%)
残りの 1,580万人は痛みがない。

〇痛みの原因はさまざま

滑膜の炎症

関節を覆う滑液包。その外側の膜が滑膜。滑膜から関節の内側に滑液が分泌されて軟骨に栄養を与え、また潤滑油の働きをする。

軟骨がすり減るとその摩耗物質が粉のように滑液の中に混じる。それが滑膜に当たって炎症を起こす。滑膜には痛みを感知する神経がある。

また、滑膜に炎症が起こるとサイトカインという物質が放出され、それがお皿(膝蓋骨)の下にある脂肪帯に働きかけることがある。脂肪にも神経があるので痛みを感じる。膝の前、お皿の下のあたりに痛みがあるのはこの可能性がある。

骨に原因

軟骨は大腿骨と脛骨の間のクッションになっているが、これがすり減ると骨そのものが傷つく(つまり骨折)。また加齢により骨密度が下がると海綿骨に亀裂が入ったりする。
骨折は回復するが、それでも骨折の跡が残ることがあり、これが痛みを発する。

骨棘が発生することもある。

腱に原因

腱は筋肉と骨をつなぐ部分。(靭帯は骨と骨をつなぐ。)

ランニングや筋トレなど運動のし過ぎで膝を使いすぎると、腱と骨とのつなぎ目が痛むことがある。

〇痛みの程度に応じて、無理ない範囲で動くべき

運動療法を使う。この本の後半に様々なタイプに応じた運動が掲載してある。

〇太ももの筋肉は衰えやすい

膝関節を伸展する(伸ばす)のは「大腿四頭筋」。太ももの前面にある筋肉で次の四つ。

  • 大腿直筋
  • 内側広筋
  • 外側広筋
  • 中間広筋

膝関節を屈曲する(曲げる)のは「ハムストリングス」と「腓腹筋(ふくらはぎの筋肉)」
ハムストリングは太ももの後面にある筋肉で次の三つ。

  • 大腿二頭筋
  • 半腱様筋
  • 半膜様筋

これらの筋肉が衰えると膝関節の動きをサポートできなくなって痛みが生じる。

〇痛みを我慢するほど痛みは増す

神経が痛みに過敏になる「感作」という作用がある。感作には次の二種類がある。

  • 中枢性感作
  • 末梢性感作

中枢性感作は、脳で痛みを抑制する働きが弱くなる。
末梢性感作は、関節や皮膚につながるセンサーとしての神経が過敏になる。

長期化(慢性化)するほど、感作は助長されるので、早期に対処すること。

痛みに対処するには「ゲートコントロール理論」というのがあって、指圧やマッサージの効果が確認されています。

Posted by 清水 俊一