『万病を治せる妙療法 操体法』
「現代医学の常識で、内臓機能の障害をおこす病名は、それぞれ腎臓病とか○○病とかいわれて、みなさんもそう思いこんでいますが、その病気だけ治そうとしてもなかなかうまくいきません。けれども、からだ全体が気持いいように動くことは自分でできます。この原理をのみこめば、自分のからだは自分で正すことができる。正体になれば病気は消える。これが自分の健康を自分で守る〃健康学の根本原理〃であり、操体法の基本です。」(『万病を治せる妙療法操体法』橋本敬三(農山漁村文化協会)P122から引用。)
身体の歪みが病気を引き起こす。身体の歪みは普通に生活していてほとんど気づかない。足を組むなどのちょっとの癖みたいなものが少しずつ溜まっていって、あるとき病態となって現れる。身体の歪みを正すには、「気持ちいいように動く」ことだ、というのが原理です。
こう書いてみると、なにも特別なことは言ってないように思えますが、改めて自分に問いかけてみましょう。「ほんとに毎日気持ちいいように動いているか?」と。
そう問われて自信をもって「Yes!」と答えられる人はどれだけいるでしょうか?
特に仕事に追われていると、気持ちいいとか悪いとか、そもそもそんなことに気を向けてる暇はないですよね。
「人間のからだは、もともとよくできているのです。それが歪むことによって不健康になっているわけですから、その歪みを治してやれば健康になるのです。歪みを治すには苦しいほう、痛いほうに動かすのではなく、らくな気持のよい方向に動かせばよいのです。これが操体法の原理であり、健康の原理です。しかし、もとにもどしても、生活が乱れるとまたこわれてしまいます。」(同 P123)
楽な方に動くのは何か後ろめたいような、罪悪感めいたものがありますね。それよりは苦しいことに耐えて前を向いて頑張っている姿が美しい、というような感覚にとらわれているのかもしれません。指圧やマッサージ・整体も同様で、痛いのが効くと思い込んでいる向きもありがちです。
苦しさや痛さに耐えて毎日の仕事に追われていた日々を、私は何十年も過ごしてきたのでした。「忙殺」とはよく言ったものですね。忙しくて自分を殺しているような感じになることでしょう。「忙」という漢字も怖い字です。「心を亡くす」のですから。
この『万病を治せる妙療法操体法』という本は、復刻版も出ていますが手持ちのものは昭和55年(1980)出版の古いものです。ずいぶん若いころ手に取っていたのだなと考えさせられます。仕事に忙殺されていたのでしょうね。
最後にもう一つ、橋本敬三先生の言葉を引用して終わります。
「健康というのは、患者自身に自分で守るという自覚をもってもらわないとだめなのです。少しもよくなりません。私は、歪みをもとにもどす方法について考えることができますし、教えることもできますが、それをするかしないかは一人一人の問題なのです。」(同 P126)