ぞうきんを洗うということ

2023-01-01動き,動きの連動,筋肉,雑感

朝出勤すると治療室の掃除をします。
ほこりを払ったあと掃除機をかけて、洗面所や台所のシンク周りや机や棚の上などを拭き掃除します。今は便利なものがあって、埃を静電気で吸着してくれるスティック型のものも使いますが、やっぱりぞうきんで水拭きしたほうが潤いがあっていい感じがします。

ところで、ぞうきんを水洗いする動きと絞る動きをよく観察してみると、肩から指先までほどよく連動しないとできない動きなんですね。

たとえばぞうきんを手で洗うという動き。これは

  1. 布を水につけて両手の内に載せ、
  2. 次に右手で布を軽くつかみ上げ、左手の母指球に布を載せる
  3. 右手で布を強く握り(同時に左手も)、左右の母指球どうしをこすりあわせる

というような一連の動きをします。

この動きは肩から指先まで適切に力を配分してはじめて可能になります。肩から腕を棒のように固めてしまっては、ちゃんときれいに洗えません。最近は布を水洗いしなくてもよい生活になりましたから、このような動きに体が馴染んでいないかもしれませんね。

ぞうきんを絞る動きについては、以前から手先の動きをよくするのに効果的だといわれています。これも実際にやりながら腕の動きを観察してみると、とてもよくできているのがわかります。

絞る動きはぞうきんを握りながら互いの手首を逆方向に回すわけですが、このときに必要な力は手指で握る力と、前腕の特に伸筋(外側の筋肉)でしょう。屈筋(内側の筋肉)に力が入りっぱなしだと、手首が回りません。けれど、指を曲げて握る筋肉は肘の内側から前腕の内側を通って5本の指に続いていますから、これを全く緩めると握れなくなります。ですから、屈筋に必要なだけの力を残しながら、外側に回す伸筋に力点を移動させて手首を回しているということになりますね。

私たちの身体はこのような微妙な連動を、しかも無意識のうちに行っているのです。必要な部分に最適な力を使うためには、その他の連動する部分の力は抜けていないといけないことがわかります。

指圧もちょうどこれと同じです。圧点に必要なだけの圧(力)を入れるためには、その他の部分の力は抜けていないといけないわけです。

動画はこちら

ぞうきんを洗って、絞って、拭く、という一連の動きは、それだけで身体のバランスを整えるトレーニングになっていたのだと思います。学校で児童生徒に掃除をさせるのは不当だというかたもいらっしゃるこのご時世ですが、教育の一環として掃除という活動が組み込まれていたのは理由のないことではなかったと、私は思います。かえって学校での掃除活動がないがしろにされる傾向がある昨今、児童生徒の身体感覚はどこで磨かれるのだろうと心配になります。ダンスも全身を動かしますが、それはイベントとしての特殊な身体感覚にすぎないのではないかと感じます。だって、私のように60歳を過ぎてダンスをするのは無理ですもの。一方で、生活の中で必要な動きは身につけておかないといけないわけですからね。

「生きる力」は年をとってからこそ必要になるのです!

Posted by 清水 俊一