『日本の身体』

2023-01-01一日一読,動きの連動,肩の力を抜く

内田樹『日本の身体』から抜き書きしました。

ある現象の中から特定の対象を切り分けて観察し分析する、というやり方が近代の科学的なとらえ方でしょう。しかしこの記述では、対象に目を向けてはいけない、とらわれてはいけない、と言っているようです。

指圧をするときにも、指でぐいぐい押すのではなく、圧点に指を置いたら頭を上げて背筋を伸ばし、その先の壁に重心を移すようにするのだと教わります。

「…<略>…」のところには、居合の達人が碁盤を刀で切るときに、碁盤の下の畳とさらにその下の土台まで切り落としたというエピソードが挿入されています。「切るということはこういうことだ」と言ったということです。

碁盤はカヤの木で作られた硬いものです。そう簡単には切れない。切る対象に刀を振り落とすのではなくその先のものに気をむけると、その途中にある碁盤も切れるということでしょうか。

護身術のひとつですが、いきなり腕を掴まれたというシーンがあると、どうしてもつかまれた部分をなんとか振りほどこうともがきますが、相手の力が強いとなかなか振りほどけません。でも、たとえば掴まれた部分をほっといて、耳の後ろの痒くなったところを掻くつもりで手を挙げるとスッと相手の腕をほどくことができます。また、足元に1万円札が落ちているとして、それを掴まれた方の手で拾うと、その動きに相手が崩れます。一度お試しください。

Posted by 清水 俊一